漢文の訓読(日本文として読む手法)で用いられる返り点には、明確な役割分担とレベルが存在します。漢字の左下に小さく添えられるこれらの記号は、上から下へと進む視線を「どの地点まで戻すか」を指定する標識です。
まずは教科書や入試で目にする主要な返り点を網羅的に確認します。
1. レ点(最もシンプルな直前戻り)
すぐ下にある漢字から、直前にある1文字上の漢字へ戻って読む記号です。アルファベットの「V」やチェックマークのような形状をしており、2文字の間を1文字だけ下から上へ反転させる役割を持ちます。
2. 一二点・一二三点(2文字以上離れた戻り)
2文字以上離れた場所へ戻る場合、あるいは複数の漢字を順番に拾う場合に使われます。「一」が付いた字を読んだ後、「二」が付いた字へ飛び、さらにあれば「三」へと進みます。「一」を読むまでは絶対に「二」を読んではいけないという厳格な縛りがあります。
3. 上下点・上中下点(一二点をまたぐ拡張記号)
「一」から「二」へと戻る読解の途中に、さらに別の戻り構造を挟み込む必要が生じた際に登場します。一二点の内側を飛び越えて戻ることはできないため、一二点をすべて読み終えた後に「上」から「下」(または「上」→「中」→「下」)へと戻ります。
4. 甲乙点・甲乙丙点(高校発展・難関大レベル)
上下点をさらに外側から挟み込むための高等記号です。「甲」の付いたブロックを読み切った後に「乙」へジャンプします。上下点を使い果たした複雑な複文構造でのみ使われます。
5. 天地点・天地人点(最上位の入れ子構造)
甲乙点すら内包する、漢文訓読における最大規模の返り点です。「天」から「地」、必要に応じて「人」へと戻ります。高校の共通テストや私大入試でも滅多に見かけない極めて特殊なケースですが、構造の頂点として定義されています。