かつて信越本線の難所であったアプト式区間を控える横川駅。列車が機関車を連結するために長時間停車するそのわずかな隙に、立ち売り職人たちが声を張り上げて釜めしを売る光景は、日本の鉄道史に残る名場面だ。そのぬくもりを支えたのが、栃木県芳賀郡益子町で造られる益子焼の器だった。
保温性に優れた益子焼の容器は、釜めしの熱を逃がさず、ふっくらとしたコシヒカリの旨味を最大限に引き出す。重厚な土鍋のフタを開けた瞬間に広がる甘辛い香りは、鉄道ファンならずとも胸が躍る瞬間である。手元に残る器を自宅で再利用し、炊飯や料理に活かすファンが多いのもこの名物駅弁ならではの楽しみ方といえる。