乃木坂46の橋本奈々未の卒業および引退理由は、日本のアイドル史の中でも類を見ないほど現実的かつ家族想いな動機に基づくものでした。
2016年10月に放送された日本テレビ系『NNNドキュメント』やテレビ東京系『乃木坂工事中』などの特番インタビューにおいて、彼女は芸能界に入ったそもそもの動機について「ロケ弁が出ることで食費が浮くと思った」「極度の貧困から脱出し、弟の大学進学費用を稼ぐためだった」と赤裸々に告白しています。北海道旭川市出身の彼女は、実家の水道やガスが止まるほどの困窮を経験しており、美術大学への進学も自身の学費・生活費を切り詰めながらの過酷な挑戦でした。
転機となったのは、彼女の献身的な支えによって弟の大学費用に目処が立ち、学費免除の制度も取得できたことでした。さらに実家の借金返済が完了した際、母親から届いた「無理しないで、好きなことをしてください。奈々未が背負う必要はもうないんだよ」という手紙が、彼女の肩の荷を下ろす決定打となりました。
自身がセンターを務めたラストシングル『サヨナラの意味』は、ミリオンセラーを記録。役目を終えた彼女は、名声や富に執着することなく、24歳の誕生日にステージへマイクを置き、自ら設定したゴールラインを鮮やかに駆け抜けました。