本名・中塚尚子として過ごした学生時代、彼女が在籍していたのは創立間もない筑波大学医学専門学群だった。厳格な医学教育と白衣の世界に身を置きながらも、彼女の心は学外の熱気あふれるサブカルチャーシーンへと向かっていた。インディーズ音楽、ミニコミ誌、現代美術——80年代特有の混沌とした熱気の中で、彼女は独創的な表現活動をスタートさせる。
「香山リカ」という印象的なペンネームが生まれたのも、まさにこの学生時代のことだ。リカちゃん人形に由来するこのペンネームを冠し、音楽誌やサブカルチャー誌で執筆を開始。精神医学を学ぶ学生としての専門知識と、サブカル少年少女たちの孤独や生きづらさに寄り添う等身大の視点が融合した語り口は、瞬く間に若者たちの支持を集めた。学業と執筆活動を両立させる多忙な日々の中で、彼女は自身のアイデンティティを確立していったのだ。