故・安倍晋三氏が公然と語っていた持病は、難病指定されている潰瘍性大腸炎である。だが世間では、過敏性腸症候群との混同が後を絶たない。なぜこれほどまでに誤解が広がったのか。理由は明確だ。どちらも激しい腹痛や下痢、突発的な便意という共通の症状を引き起こすからだ。しかし、病態の根本はまるで異なる。
潰瘍性大腸炎は大腸粘膜に慢性的な炎症や潰瘍が生じる自己免疫的な疾患であり、進行すると出血や穿孔、癌化のリスクすら伴う。一方で過敏性腸症候群は、内視鏡検査などで腸管自体に器質的な異常が見られないにもかかわらず、消化管運動異常や知覚過敏が起きる疾患だ。病変が目に見えるか否か。この決定的な違いを理解することが、適切な診断と治療への第一歩となる。