2002年の舞台出演を最後に、山田五十鈴は静かに表舞台から身を引いた。世間では「突然の引退」と騒がれたが、その裏には脳梗塞の発症と、それに伴う懸命なリハビリ生活があった。晩年は都内の高級ホテルでの暮らしから、機能が整った介護施設へと住まいを移し、穏やかな療養生活を送ることとなった。
彼女が人前に姿を現さなくなった理由は単なる体調不良だけではない。「山田五十鈴」という完璧な大女優のイメージをファンの中で崩したくないという、強い美意識が存在していたからだ。介護スタッフに対しても常に礼儀正しく、身だしなみを整えることを怠らなかった彼女の姿に、真のプロフェッショナリズムが宿っていた。