1966年に発表された筒井康隆の原作『時をかける少女』において、主人公・芳山和子の辿った運命は、アニメ版の真琴とは一味違う、静けさと切なさに満ちている。
未来人・深町一夫(ケン・ソゴル)によって記憶を消去された和子は、彼と過ごした甘やかな時間の詳細をすべて忘れてしまう。しかし、ラベンダーの香りとともに胸に刺さる「いつか素敵な人が現れる」という予感だけは、彼女の心の奥底に残り続けた。原作における「その後」は、劇的なドラマではなく、失われた記憶の残像とともに生きる人間の健気さを静かに描いている。忘却と記憶の狭間で生きる和子の姿は、SFという枠組みを超えた普遍的な人間模様として、読者に深い余韻を残した。