1985年、彼は東ドイツのドレスデンへ赴任する。この地での勤務は、彼の人生観と国家観を根底から揺さぶる転換点となった。東側陣営の崩壊が目に見える形で進行するなか、ベルリンの壁崩壊直後にはKGBの拠点が群衆に包囲される危機に直面した。
自ら銃を手に拠点を防衛し、モスクワへ支援を求めたものの、中央からは「モスクワは沈黙している」という冷酷な回答しか返ってこなかった。この夜の絶望感と無力感が、国家の強大さと中央集権的な統制を何よりも重視する政治思想のバックボーンとなった。国家の揺らぎや無秩序に対する強烈な拒絶反応は、まさにこの冷戦末期のドレスデンで形作られたのである。