ベースとなったのは、チャールズ・チャップリンの名作『街の灯』にインスパイアされた韓国映画『ただ君だけ』だ。しかし、本作を単なる「人気作の焼き直し」に終わらせなかったのは、監督を務めた三木孝浩の洗練された演出美学である。
三木監督といえば、光の捉え方や色彩設計において日本映画界でも随一の手腕を誇る。本作でも、哀愁を帯びた夕暮れの光や、静まり返った室内を照らす街灯の柔らかな影など、登場人物の心情に寄り添う美しいビジュアルが全編にわたって展開する。
韓国版の骨太なドラマ性を尊重しつつも、日本の風景や佇まいに馴染む繊細な情緒を丁寧に織り込むことで、原作ファンをも唸らせる独自の抒情詩へと昇華させたのだ。