会社から「業務に必要なのだから自分のスマホを使え」と指示された場合、それは絶対的な命令なのだろうか。結論から言えば、労働者が拒否する権利は法的に担保されている。使用者には業務に必要な道具を準備・支給する責任があり、私物端末の利用を一方的に強制する権利までは認められていない。
根拠となるのは、労働者の利益を守る各種の規定だ。企業と従業員の間で交わされる労働契約において、私物の拠出があらかじめ合意されていない限り、業務上の指示であっても過剰な制約には該当しない。労働基準法の観点からも、業務にかかる経費を従業員に一方的に負担させる行為は実質的な賃金カットとみなされかねず、法的な不利益変更の議論に直結する。
過去の裁判例や最高裁判所の判断枠組みを見ても、労働者に対する指揮命令権の行使には合理的な理由と相当性が求められる。私生活の根幹をなすスマートフォンへの介入を強いる場合、合理的な理由を証明できない企業側の言い分は退けられるケースが多い。弁護士(労働法専門)の多くも、正当な理由なき強要は違法性が高いと指摘する。