裏社会のリアリティを描いたエンターテインメント作品でも、名刺の扱いは重要な小道具として登場する。北野武監督の映画『アウトレイジ』シリーズでは、名刺のやり取りや代紋を背負った男たちの容赦ない抗争と虚飾が凄惨に描かれた。また、HBO MaxとWOWOWが共同制作した配信ドラマ『TOKYO VICE』や、Netflixの犯罪ドキュメンタリー番組でも、ネオノワール的な美学とともに極道の独特な文化が世界へ発信されている。
映画やドラマにおけるネオノワールの世界では、名刺が一瞬で交渉を有利に進める魔法のカードとして描かれがちだ。だが現場の取材を通じた報道ジャーナリズムの視点から見れば、現実ははるかに泥臭く冷酷だ。現在では名刺一枚差し出す行為自体が恐喝や威圧とみなされ、身を滅ぼす引き金となり得る。