研究所がいま最も熱心に取り組んでいるテーマの一つが、ポスト輸入小麦を見据えた「新時代の穀物ブレンド技術」だ。かつてはグルテンの質が弱く製パンに向かないとされた国産小麦も、品種改良と製粉技術の進化で劇的に変わった。だが、ロットごとの吸水性のブレや吸水速度の違いは依然として職人を悩ませる。
研究所の実験室では、日本各地から集められた新品種小麦や微細粉米粉を使い、グルテングラフやファリノグラフによる粘弾性テストが連日繰り返されている。「配合比率を1%変えるだけで、口どけのスピードと翌朝のパサつきがまるで別物になる」。研究員がつぶやきながら見せてくれたデータシートには、生地の伸張性と引張抗力が緻密な曲線となって描き出されていた。経験則だけに頼るベーカリーでは数年かかる試行錯誤を、ここではわずか数週間の科学的アプローチで解き明かしていく。