焼肉専門店といえば、どこか「ハレの日」の気負いがあるか、あるいは煙にまみれる路地裏の雑多さかの二極化になりがちだ。しかし、この空間にはそのどちらでもない居心地の良さが漂っている。かつての大型居酒屋仕込みのゆったりしたボックス席が、プライベートな安心感を生んでいるからだ。
祖父母が孫に肉を取り分けるテーブルのすぐ斜め向かいでは、カウンターに座った青年がワイヤレスイヤホンを耳に、一人焼肉とハイボールをマイペースに楽しんでいる。誰も周囲を気にしていない。この「放っておかれる心地よさ」こそ、長年大衆と向き合ってきたチェーン店にしか出せない年輪のような空気感だ。