改めて振り返れば、『風光る』が少女漫画界および歴史フィクション界に与えた衝撃は計り知れない。それまでの新選組作品といえば、男たちの殺伐とした政治抗争や剣戟が中心であり、硬派な時代劇としての文脈が主流であった。しかし渡辺多恵子は、綿密な歴史取材に基づきながらも、隊士たちの人間味あふれる日常や葛藤、そして純粋な恋心を正面から描いてみせた。
試衛館以来の絆、近藤勇や土方歳三らの人間的魅力、そして男装の麗人という古典的な仕掛けを最高峰の歴史ドラマへ昇華させた手腕。本作があったからこそ、新選組という歴史上の存在はより身近で、愛おしい存在として現代に受け継がれた。