現在広く知られているテレビ朝日系列での放送に先駆け、1973年にわずか半年間だけ放映された「日本テレビ版」の存在を知る者は、今や一握りだ。制作会社の経営破綻という悲劇的な幕引きによってフィルムの散逸が噂され、アニメファンの間では長年「幻の作品」として都市伝説のように語り継がれてきた。
最も驚くべきは、初期のドラえもんの声を担当していたのが、豪快なダミ声で知られた名優・富田耕生だったという事実である。当初のドラえもんは頼りないのび太を威厳たっぷりに指導する「おっさん風」のキャラクターとして描かれていた。しかし放送後半には野沢雅子へと交代し、さらに1979年のテレビ朝日版開始に伴い、大山のぶ代がその命を吹き込むことになる。大山のぶ代が創り上げた愛らしくも包容力溢れる声の演技は、作品を社会現象へと押し上げる決定的な原動力となった。