加害少女の生い立ちを振り返ると、客観的には極めて恵まれた家庭環境に生まれ育ったことが分かります。少女の祖父は地元の有力者であり、父親は佐世保市内でも著名な弁護士として活躍していました。また、実母も地元の教育委員やPTA活動に熱心に取り組むなど、地域社会から厚い信頼を寄せられる一家でした。
しかし、家庭の歯車は徐々に狂い始めます。幼少期から聡明で学業優秀、スポーツや芸術の分野でも才能を発揮していた少女でしたが、小学生時代から同級生の給食に異物を混入させるなどの問題行動が見受けられました。
決定的な転機となったのは、2013年秋に母親が悪性腫瘍(すい臓がん)で病死したことでした。少女の精神的な防波堤となっていた母親の死後、父親はわずか数カ月で別の女性と再婚。これに強く反発した少女は、2014年3月に就寝中の父親を金属バットで殴打し、頭蓋骨骨折の重傷を負わせるという重大な傷害事件を引き起こします。
身の危険を感じた父親は、少女を精神科病院へ通院させるとともに、高校進学を機に一人暮らし用のマンションを手配しました。しかし、この「独り立ち」が結果として誰の目も届かない密室を生み出し、最悪の悲劇を招く引き金となってしまったのです。なお、事件から約2カ月半後の2014年10月、深い自責の念に苛まれた父親は自ら命を絶ちました。