漢字「左」に向き合った際、多くの人が直面する最初の疑問が「1画目は横か払いか」という二者択一です。文部科学省の学習指導要領に準拠した正解は、「左」の一画目は横棒(一)であり、二画目に左払い(ノ)を交差させ、その後に下の「工」を三画目(横)・四画目(縦)・五画目(横)の順で書き進めます。
一方、対極に位置する「右」の書き順は、一画目が「左払い(ノ)」、二画目が「横棒(一)」となり、三画目から五画目で「口」を完成させます。外観上は上の冠部分(𠂇)がほぼ共通に見えるため、「対称の形なら書き順も同じはずだ」という認知の思い込みが生じやすく、これが多くの学習者を惑わす原因となってきました。
右との書き順の違いを生み出している最大の要因は、それぞれの文字の下部に収まっている「構成要素への筆のつながり(筆脈)」にあります。「左」の場合は一画目に横を引いてから左下へ払うことで、筆の穂先が自然と下段にある「工」の一画目(横棒)の始筆へと誘導されます。反対に「右」は、先に左下へ払い、次に横棒を引いて右端で止めることで、穂先がそのまま「口」の最初の一画(左の縦棒)へとスムーズに移行できる力学的な構造を持っています。