業界の境界線を越え、クリソツという言葉がお茶の間の共通言語となった決定打は、1980年前後のバラエティ番組ブームだった。その中心にいたのがタモリである。ジャズへの深い造詣と、業界の生態を冷静に観察する批評眼を持っていた彼は、テレビ画面の向こう側にある「業界人の胡散臭さ」をパロディとして演じてみせた。
タモリがコントやトークで誇張して使ったズージャ語の数々は、視聴者にとって「少し背伸びした大人の世界」を覗き見るようなスリルを与えた。折からの昭和ポップカルチャーの爛熟と相まって、若者たちはテレビ業界人の真似事として「クリソツ」を面白がり、教室や街角へと持ち出していった。密室の符丁は、強烈なアイロニーをまとった大衆エンターテインメントへと変貌を遂げたのである。