創業1885年の老舗「おぎのや」が手がける峠の釜めしは、昭和33(1958)年に世に送り出された。当時の駅弁といえば、竹の皮に包んだおにぎりや木折箱に入った冷たい幕の内弁当が当たり前だった時代だ。「乗客に温かいお弁当を届けたい」という一心で、四代目社長の高見澤みね氏が栃木県益子町の焼き物「益子焼」を容器に採用する画期的な発想を得たことがすべての転換点となった。
保温性に優れた土鍋に入れることで、ホームで購入してから車内で食べる瞬間まで温もりが保たれる。このアイデアは大ヒットを記録し、昭和のモータリゼーションや鉄道旅行ブームの波に乗って一気に全国区へと駆け上がった。横川駅のホームに響き渡った売り子の威勢の良い掛け声は、昭和の日本を象徴する音の風景として語り継がれている。