ロックミュージシャンといえば、「ハングリー精神」や「反逆」のイメージが強い。貧しさをバネにのし上がるストーリーが一般的だが、桑名正博はその真逆を行く存在だった。最初からすべてを持っている男が、あえて泥臭いロックの世界に身を投じたのだ。
彼は「食うために音楽をやる」必要がなかった。だからこそ、自分のやりたい音楽、自分がカッコいいと思う生き方を徹底的に貫くことができた。売れるための妥協を嫌い、後輩ミュージシャンたちに惜しみなく奢り、面倒を見る。その太っ腹な生き様は、実家の経済的な余裕がもたらした「心のゆとり」が生み出した、彼独自のロックンロール美学だった。