体験者がいなくなる未来を見据え、草の根の平和教育も進化を遂げている。全国の小中学校や高校では、語り部の遺族から聞き取ったエピソードを地元の生徒たちが「語り継ぎ手」として再構成し、自らの言葉で同世代に発表する活動が普及してきた。誰かに教えてもらう受動的な学習から、自ら調べて発信する能動的な平和学への転換だ。
「おじいちゃんから聞いた戦争の話を、僕たちが友達に話す。自分が伝えないと消えてしまうから」。都内の高校生はそう語った。体験の「直伝」が途絶えるからこそ、第三者が主体的につなぐ文化が生まれ始めている。それは、戦後80年を超えた日本社会が模索し始めた、新しい記憶の保持システムといえる。