白味噌の汁で煮た餅をきな粉に浸す――奈良県全域、特に中南部の農村地帯を中心に受け継がれてきた「きな粉雑煮」には、いくつかの説が存在する。最も有力とされるのが、きな粉の黄色を「稲穂の黄金色」に見立て、新年の豊作を祈願したという説だ。古来より農耕が盛んだったこの地域において、黄色い粉をまぶす行為そのものが吉兆とされていた。
さらに興味深いのは、当時の貴重品であった砂糖と関係する説だ。かつて砂糖は大変な高級品であり、庶民が日常的に口にできるものではなかった。正月の特別な日だからこそ、白味噌の雑煮に入った餅を取り出し、砂糖入りのきな粉をつけて食べることで、贅沢な味わいを楽しんだとされる。汁の塩気ときな粉の甘みが交わる甘辛い味は、一度食べると病みつきになる味わいである。