着ぐるみアクターの安全管理において、業界全体に大きな衝撃を与えたのが2019年7月に大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」で発生した死亡事故です。
当時、パーク内でキャラクターの着ぐるみを着用してショーの練習を行っていた28歳の男性アクターが、練習終了直後に意識を失って倒れ、搬送先の病院で熱中症(脱水による低酸素脳症など)により亡くなりました。当時の外気温は33度を超えており、約16kgの着ぐるみを着用して約25分間の激しいリハーサルを行っていたことが明らかになっています。
この事故を受け、労働基準監督署は業務上の過重負荷による熱中症として労災認定を下しました。さらに、現場における休憩体制の不備や、WBGT(暑さ指数)に応じた明確な中止基準が設定されていなかった点などが厳しく指摘されることとなりました。
過去には「夢を壊さないために途中で脱いではいけない」「体調不良でも最後まで演じ切るのが美徳」という誤ったプロ意識が現場に蔓延していた側面も否めません。しかし、この痛ましい事故を契機に、司法および行政の場でも着ぐるみ着用作業が「極めてリスクの高い高熱・過密労働」であると再定義され、管理者の安全配慮義務違反を問う判例や行政指導が厳格化されました。