「自分たちが実習で作っているサバ缶を、宇宙へ届けられないだろうか」――発端は2006年、小浜水産高校(現・福井県立若狭高校)の授業中に生徒が発した素朴な疑問でした。小浜市は古くから朝廷に海産物を献上してきた「御食国(みけつくに)」であり、京都へと続く「鯖街道」の起点として知られる街です。地域の誇りであるサバを使い、どこまで高い目標に挑戦できるかという探求活動が産声を上げました。
しかし、JAXAが定める「宇宙日本食認証基準」の壁は極めて厚いものでした。地上とは全く異なる閉鎖環境・微小重力空間で使用されるため、「常温で1.5年以上の賞味期限」「微小重力下で液が飛び散らないこと」「宇宙飛行士の健康を損なう微生物が存在しないこと」など、過酷な安全衛生・品質保持のハードルが課されていたのです。
歴代の生徒たちは代々研究データを引き継ぎ、製造パートナーである地元名門の「福井缶詰」と二人三脚で試行錯誤を重ねました。後輩たちが先輩の失敗データを精査し、改良を積み重ねること14年。のべ300人以上の生徒の情熱が結実し、2018年11月、高校生が開発した食品として日本初となるJAXA認証を正式に勝ち取ったのです。単なる学生の自由研究を超えた、教育工学・地域連携の金字塔として今なお語り継がれています。