本作の映像美を語るうえで避けて通れないのが、近年の映画史を彩ってきた二人の巨匠の存在だ。クリストファー・ノーランが魅せる緻密な時間構築と圧倒的なスケール感、そしてデヴィッド・フィンチャーが得意とする冷徹な影の配置と神経質なほどの画面構成。その双方が本作の美学に濃密な影を落としている。
『ザ・アイビー』のレンズ越しに捉えられる都市の質感は、観客の視線を引きずり込み、精神的な圧迫感を与える。登場人物が自らの過去と対峙する場面で見せるライティングの切り替えは、観客に対して明示的なヒントを与えつつも、すぐさま次の迷宮へと突き落とす。