伊東市街地を流れる松川の河口近くに整備された松川藤の広場が、春の旅行シーズンにこれほど熱い視線を集める最大の要因は、その特異な構造設計にあります。一般的な藤棚といえば直線的なパーゴラ(日陰棚)を連想しがちですが、当広場の藤棚は約3,000平方メートルに及ぶ広大な敷地の一角に、扇状の網天井としてダイナミックに張り巡らされています。
現地に植樹されている藤は計16本。これらが広場中央に向かって枝を四方に伸ばし、網目状の天井を隙間なく埋め尽くします。最盛期に藤棚の下に立つと、視界の約270度が繊細な紫のカーテンに覆われる圧巻のパノラマが広がり、訪れた人々を非日常の世界へと誘います。川面を渡る潮風に乗って藤の甘い芳香が漂う空間体験は、視覚だけでなく嗅覚でも春を実感できる貴重なひとときとなります。
すぐ隣には、徳川家康の外交顧問として知られる三浦按針(ウィリアム・アダムス)が日本初の洋式帆船を建造した史跡「按針メモリアルパーク」が隣接しており、歴史散策と季節の花鑑賞を一度に楽しめる点も、旅情を求める観光客の心を捉えて離さない理由です。