会社員からフリーランスへの転身を考える人が最も過小評価しているのが、「労働基準法の適用外」という現実の重さです。労働基準法が定める1日8時間・週40時間の労働時間制限、残業代(割増賃金)の支払い、有給休暇の付与、不当解雇の禁止といったセーフティネットは、業務委託契約の受託者には一切適用されません。
現場取材班が耳にしたあるWebディレクター(30代男性)の告白は、この歪みを如実に物語っています。『「業務委託だから自由だよ」と言われて月額45万円で契約したのですが、毎日Slackで朝9時からの定例出社を義務付けられ、夜中2時まで指示出しが続きました。残業時間は月140時間を超えていましたが、会社からは「業務委託だから残業代は1円も出ない。終わらないのは君の能力不足」と切り捨てられました。身体を壊して離職する際も、解雇予告手当どころか「途中で投げ出したから損害賠償を請求する」と脅されたのです』。
この事例は、単なる過重労働ではなく明確な違法行為である「偽装請負(ぎそううけおい)」の典型例です。厚生労働省の通達基準において、業務委託契約であっても以下の実態が認められる場合、法的には「労働者性(実質的な雇用関係)」が認定されます。
【労働者性の判断基準となる現場の実態】
・始業・終業時刻が指定され、勤務場所が厳しく拘束されている
・業務の遂行過程において発注者から直接的かつ具体的な指揮命令を受けている
・仕事の依頼に対して拒否する自由が実質的にない
・他社の業務を行うことが事実上禁止・制限されている
・業務に必要なパソコンや作業機材を発注側から無償貸与されている
偽装請負が発覚した場合、行政指導の対象となるのは発注企業ですが、受注者側も精神疾患や過労で倒れた際に労災保険の認定を巡って泥沼の労働審判を強いられることになります。「名ばかり業務委託」の甘言に乗せられ、労働者としての権利を奪われたまま使い潰される構図は、SNSや知恵袋の相談スレッドでも毎月のように悲痛な叫びとして投稿されています。