加須市内を歩けば、高齢の住民が同じく歩行のおぼつかない老犬を慈しむように散歩させている光景に出会う。いま地方都市で深刻化しているのが、飼い主とペットの双方が高齢化する「老老介護」の構図だ。
体重20キロ近い大型犬が寝たきりになったとき、80代の飼い主がひとりで床ずれの処置や排泄介助を行うのは物理的に不可能に近い。動物病院側も、単に薬を処方するだけでなく、介護用ハーネスの提案や、介護負担を減らすための通院ペースの調整など、生活全般に踏み込んだ助言を求められる場面が増えている。
「自分が先に逝ってしまったら、この子はどうなるのか」。診察台の横で涙をこぼす飼い主の手を握り、福祉や民間シェルターの現状も含めて現実的なセーフティネットを共に考える。そこには、医療の枠組みを越えた人間同士の深い共感が流れている。