国鉄が広大な路線網と膨大な車両数の対応に苦慮する中、機動力を持つ大手私鉄が先陣を切った。代表例が小田急電鉄である。都心と箱根を結ぶ観光特急「ロマンスカー」を運行していた同社は、沿線価値の向上と乗客の快適性確保のため、早期から汚物処理装置の導入に踏み切った。
1960年代に入ると、一部の私鉄車両で貯留式(タンク式)トイレの採用が本格化する。垂れ流しを全面的に禁止し、車内に設置した大型タンクにすべて溜め込んでおき、車両基地で一括して回収・処理する方式だ。民間事業者の柔軟かつスピーディーな決断が、鉄道産業全体の衛生意識を底上げする強力な推進力となったのは間違いない。