ショーケースの主役を務めるのは、王道でありながら他とは一線を画すショートケーキだ。一口運んだ瞬間に広がるのは、驚くほど軽やかな生クリームのコクと、しっとりと口どけるスポンジ生地のハーモニー。甘さは極めて上品に抑えられ、主役となる苺の酸味とみずみずしさを最大限に引き立てている。
厨房で腕を振るうパティシエは、気温や湿度によって生地の泡立て加減や焼き時間を毎日ミリ単位で調整しているという。日本洋菓子協会が重んじるクラシカルな基本技術を忠実に守りながらも、現代の嗜好に合わせて油分や糖分のバランスを再構築する手腕は圧巻だ。シンプルだからこそ誤魔化しが利かない一品に、職人のプライドが息づいている。