新宿思い出横丁の歴史と由来を紐解くと、その原点は終戦直後の1946年(昭和21年)頃に形成された露店や闇市にまで遡ります。物資不足の時代に、進駐軍の統制外であった牛や豚の内臓肉(ホルモン)を串焼きにして提供したことから「もつ焼き横丁」として発展し、かつては「しょんべん横丁」という強烈な通称でも親しまれました。1999年の大規模火災を乗り越え、現在も約80軒の飲食店が幅2メートルほどの極小路地にひしめき合っています。
この場所が今、世代や国籍を問わず熱狂的な支持を集めている最大の理由は、現代の都市空間から失われつつある「濃密な人間的コミュニケーション」と「生の昭和遺産」がそのまま残されている点にあります。取材に応じた飲食業界関係者は、「カウンター席で肩が触れ合う距離感だからこそ、隣り合わせた見知らぬ客同士が自然と乾杯を交わす。デジタル社会で希薄化したリアルな繋がりを体験できるサードプレイスとして、唯一無二の価値を持っている」と指摘します。
さらに近年は、SNSのビジュアル訴求力やインバウンド観光の回復に伴い、昼飲み需要が急拡大しています。夕暮れ前の15時頃からすでに赤提灯に火が灯り、西口のビル群の影でビールグラスを傾ける時間は、日常の喧騒を忘れさせる特別な体験として定着しています。