図形楽譜の根本にあるのは、「音をいかにして視覚的にシンボル化するか」という根本的な問い直しである。従来の五線譜が音の絶対的な高さや正確なリズムを固定化するのに対し、図形楽譜では時間の経過やダイナミクス、音色の質感を作曲家が独自のルールで描き出す。読み方の基本原理として、多くの作品では横軸が時間経過、縦軸が音高や音量のグラデーションに対応している。しかし、その解釈は一筋縄ではいかない。
例えば、太い曲線が描かれていれば「徐々に音量を増しながら滑らかに音程を変化させる」と読み解き、点の密度が高いエリアでは「微小な音要素を急速に連続打演する」といった演奏的判断が求められる。現代音楽や前衛音楽、あるいは実験音楽の文脈において、これらは演奏者の主体的解釈を促すための触媒として機能する。楽譜に記された図形は絶対的な命令ではなく、演奏者が音の宇宙を即興的に構築するためのロードマップなのだ。