スタジアムを見上げると、幾重にも重なる木製の「軒庇(のきひさし)」が目に入る。この優美な外観こそ、法隆寺の五重塔など日本の伝統的な木造建築から着想を得た構造の秘密だ。47都道府県から集められたスギやカラマツなどの木材が組み合わされ、細部まで計算し尽くされている。北側の雪や風、南からの眩しい日差しなど、方角に合わせて木材の密度や組み合わせ角度を変えるという微細なこだわりが潜む。
さらに驚くべきは、エアコンに過度に頼らない自然通風システムだ。夏の猛暑下でも、吹き抜ける風が観客席の熱気を効率よく上部へ逃がす気流設計が施されている。ハイテクな流体力学のシミュレーションと、古来伝わる軒庇の知恵が融合した「木と緑のスタジアム」。単なるレトロ回帰ではなく、最新工学が下支えする構造美の真骨頂と言える。