公的データは現在の変化を如実に物語っている。厚生労働省が公表する「就労条件総合調査」のデータによれば、退職給付制度を導入している企業の割合は徐々に減少し、今や全体の約2割の企業が制度を持たない。
法的な側面を整理しておくと、労働法・就業規則において企業側に退職金の支払いを強制する規定は存在しない。退職金制度の有無や支給基準は、あくまで各企業の就業規則に委ねられている任意項目に過ぎないのだ。
日本経済団体連合会(経団連)が推し進めるジョブ型雇用の導入や、政府の働き方改革推進プロジェクトの加速により、企業は「年功序列型の退職給付制度」の維持から脱却しつつある。人件費の固定化を防ぎ、優秀な人材に対して即座に高い給与で報いる人事戦略への転換が、制度未導入の背景には隠されている。