効率性が何よりも優先されがちな現代の食品製造ラインにあって、福砂屋の工房には異色の光景が広がっている。大仕掛けな自動ミキサーの姿はなく、そこにあるのは職人が己の感覚だけを頼りに生地と向き合う真剣勝負の場だ。
卵の黄身と白身を分け、まずは白身だけを丹念に泡立ててから黄身を加える「別立て法」。季節や毎日の気候、室温や湿度によって生地の状態は刻一刻と変化する。熟練の職人は、手のひらに伝わる僅かな感触と生地の照りを見極めながら、手作業で空気の含ませ具合を微調整していく。この丁寧なプロセスこそが、あのきめ細やかでしっとりとした独特の質感を支えているのだ。