一連の騒動において、最も衝撃的かつ痛ましい出来事として記憶されているのが、指導的立場で研究を支えた世界的科学者、笹井芳樹氏の悲報である。発生生物学の世界的権威であり、日本の生命科学分野を牽引する天才脳神経学者として知られた同氏の死は、内外の学術界にあまりにも深い爪痕を残した。
論文の共同著者として、また理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の副センター長として、笹井氏は研究の科学的妥当性の説明や組織の防衛に追われた。日々激しさを増すバッシングと、研究者としての尊厳を巡る葛藤の中での苦悩は察するに余りある。氏の急逝は、過熱した報道体制や組織の危機管理、そして研究者個人の精神的負荷に対する倫理的問いかけを提示することとなった。