数年前の閉店告知は、地元松本だけでなく全国の洋食ファンを震撼させた。創業者の体調不良という不可抗力。長年親しまれた味が途絶えるかと思われたその時、手を挙げたのは店を愛してやまない有志たちだった。伝統のレシピ、ソースのブレンド比率、さらには独特の接客間合いに至るまで徹底的な「継承」が行われた。
2026年現在の店内を見渡せば、そのバトンタッチが完璧な成功を収めたことは一目瞭然だ。古くからの常連客が「変わらないね」と微笑み、SNSで噂を聞きつけた若い観光客が感嘆声を上げる。暖簾を守るとは、ただ古いものを残すことではない。情熱を絶やさずに燃やし続けることなのだと、この店は静かに物語っている。