私立高校の年収に関してネット上で流布している情報には、現場の経営力学を知らない人々による多くの誤解や盲点が含まれています。転職や就職活動で後悔しないために把握しておくべき「3つの不都合な真実」を整理します。
第1の誤解は、「偏差値が高い有名進学校なら、必ず給与も最高水準である」という思い込みです。確かに、潤沢な資産運用益や寄付金収入を持つ伝統校は高待遇を維持しています。しかし、新興の進学校や中堅から急成長した実績重視校の中には、校舎の建て替えやICT設備の導入に伴う多額の借入金を抱え、人件費比率を意図的に抑制している法人が存在します。生徒の進学実績は全国トップクラスでありながら、教員の昇給ペースは公立以下という学校も現実に存在するため、「高い知名度=高年収」と短絡的に結びつけるのは危険です。
第2の盲点は、「私立高校の生徒指導は公立より楽でホワイトである」という幻想です。私立学校において、保護者や生徒は授業料を直接支払う「顧客(カスタマー)」としての色彩を強く帯びます。そのため、進路指導に対する要求水準が極めて高く、保護者からの過度な要求やクレーム対応に忙殺される教員が後を絶ちません。土曜授業の実施に加え、日曜・祝日には受験生を集めるための学校説明会やオープンキャンパス、部活動の遠征引率がぎっしりと組まれ、精神的・肉体的な負担は公立校を凌駕することも少なくありません。
第3の誤解は、「少子化でも私立高校は補助金があるから潰れない」という神話です。私立学校振興・共済事業団が公表する私立高校の定員充足状況を見ると、定員割れに陥っている法人は全国で約3割に達しています。定員割れが慢性化すれば、都道府県からの私学助成金が減額され、賞与のカットや定期昇給の凍結、最悪の場合は学校の統廃合や法人の破綻へと直結します。公務員である公立教員とは異なり、勤務先の経営悪化によって給与が急落するリスクを常に内包しているのが私立校の宿命です。