かつては一部の愛好家や現地住民だけが知るローカル文化だった激臭食品を、メジャーな娯楽へと押し上げたのはテレビ番組の功績が大きい。『世界の果てまでイッテQ』や『水曜日のダウンタウン』といった人気バラエティ番組では、タレントたちが悶絶するリアクション芸の起爆剤として激臭アイテムが幾度となく登板してきた。
テレビの科学バラエティが築いた激臭の文脈は、インターネットの普及によって爆発的な広がりを見せている。YouTubeでは「シュールストレミング開封動画」が定番の人気コンテンツとなり、国内外のインフルエンサーが防護服姿で挑む姿が数千万回再生を叩き出す。TVerやABEMAといったネット配信プラットフォームでも、過激な罰ゲームや臭気リアクションを売りにしたオリジナル番組が高いエンゲージメントを獲得している。
画面越しには直接届かないはずの「ニオイ」が、出演者の過剰な拒絶反応や悶絶顔を通じて視聴者の脳内へリアルに補完される。視聴者は安全地帯にいながらにして、極限の生理的嫌悪感をスリルとして消費しているのだ。嗅覚エンターテインメントの需要は衰えるどころか、より先鋭化している。