受給者側からすれば「なぜ行政はボタン一つで医療券を病院に送れないのか」と疑問を抱きがちです。ここには、福祉事務所における厳格な公金支出プロセスの壁が存在します。
医療券は、生活保護法に基づく行政処分(保護変更決定)の一環として発行されます。ケースワーカーが申請を受理した後、査察指導員(スーパーバイザー)の決裁を経て、基幹業務システムから出力される仕組みです。自治体によっては電算処理バッチが夕方にしか走らない仕様になっており、午前中に窓口で申請しても紙の医療券が手元に出るまで数時間のタイムラグが生じます。郵送交付を希望した場合は、手元に届くまで最短でも2〜3日を要するのが実情です。
この行政のタイムラグに巻き込まれ、病院側から「医療券が届くまで一時的に預かり金を預かりたい」と求められるケースがあります。預かり金(5,000円〜1万円程度)を支払った場合、後日福祉事務所から病院へ医療券が直接送付され次第、領収書と引き換えに全額が手元へ返金されます。
手持ちの現金が完全に枯渇しており預かり金すら払えない場合は、絶対に無理をして借金などをしてはいけません。「生活費の残金が底をついており手持ち現金がない」と事実を伝え、「翌朝一番で担当ケースワーカーから病院医事課宛てに受給証明の電話を入れてもらう」という約束を取り付けることで、金銭の支払いを猶予してもらうのが現場における実務上の標準対応です。