最新の現地調査によって判明したのは、市販されている一般的なスプレーに広く使用されているピレスロイド系殺虫剤に対して、異常なほどの強い抗体を持つ個体の急増だ。特にビルの地下街や飲食店の厨房を主なすみかとする小型のチャバネゴキブリにおいて、その遺伝的変化は顕著にあらわれている。
生物が薬物に対する抵抗力を獲得する薬剤耐性のメカニズム自体は新しいものではない。かつて日本における衛生害虫研究の第一人者であった安富和男博士らが昭和の時代から警告を発していた現象が、数十年を経て極めて深刻なレベルへと到達した形だ。従来の100倍以上の濃度の薬剤に晒されても生き残る個体が確認されており、進化のスピードは専門家の予想を遥かに超えている。