事態の始まりは、国民健康保険制度の隙間を巧妙に突いた特殊な手口だった。警視庁が捜査を強めた背景には、バングラデシュ国籍のジュリップ・バサロ氏を中心とするグループが、海外の現地病院で診察を受けたかのように装う虚偽の申請書類を作成していた疑いがある。いわゆる海外療養費詐欺事件と呼ばれるこの手口は、自治体の窓口審査が海外の現地医療機関へ直接確認を取ることが難しいという構造的弱点を突いたものだった。
不正にだまし取られたとされる支給額は数千万円規模に上り、事態を重く見た警察当局は本格的な強制捜査へと舵を切った。しかし、捜査の網が狭まる直前、容疑者はすでに日本を出国。国内での拘束が困難となった事態を受け、警視庁はICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際手配を要請する事態へと発展したのである。