1840年代、欧州全域を巻き込んだ熱狂は「リストマニア」と呼ばれた。現代のロックスターの原点とも言えるこの現象は、後世のカルチャーにも多大な影響を与えている。1975年の映画『リストマニア』をはじめ、ポップカルチャーの中で彼は度々「欲望とカリスマの象徴」として描かれてきた。
だが、その劇的なセルフプロデュース力こそが、彼の計算された知性とセンシティブな内面の裏返しだった。聴衆を魅了する演出の裏で、彼は自身の音楽表現が単なる娯楽として消費されることに強い孤独感を覚えていたという。過激なパフォーマンスは、観客の期待に応えようとする誠実さと、表現者としての焦燥感が表裏一体となった結果だった。