楽曲自体の持つ無垢な輝きは、作詞を手掛けたサトウハチローと、作曲家・万城目正の卓越した職人技によって生み出されました。
「赤いリンゴにくちびる寄せて だまって見ている青い空」という冒頭のフレーズには、戦時中に徹底して排除されていた「個人のささやかな幸福」と「自由な感情」が見事に凝縮されています。戦意高揚を目的としたスローガン調の言葉から人々を解き放ち、誰のものでもない青空と、手元にある小さな果物の美しさを描くことで、人間性の回復を促しました。
万城目正によるメロディは、日本の伝統的なヨナ抜き音階をベースにしつつも、西洋ポピュラー音楽の軽快なテンポ(ポルカ調のリズム)を取り入れています。老若男女が一度聴けば口ずさめる親しみやすさは、焦土と化した街を歩く人々の足取りを自然と前へ進める力を持っていました。