日本の地図記号と海外の地図記号を見比べたとき、最初に突き当たるのが「成り立ちの思想の違い」です。小学校の社会科で学ぶ日本の地図記号の多くは、明治時代に軍事目的も兼ねて旧陸軍参謀本部陸地測量部が作成した地形図にルーツを持っています。限られた紙面に細かく施設を落とし込むため、漢字の一部を崩した形や、役所の道具・旗などを抽象化した図案が採用されました。日本人にとっては歴史的文脈から直感的に理解できても、前提知識のない海外出身者には暗号に見えてしまう構造的な問題を抱えています。
一方、欧米をはじめとする海外の地図記号は、言語の壁を越えて誰にでも一目で伝わる「国際標準のピクトグラム思想」をベースに発展してきました。空港や駅のサインシステムと同様、施設の外観やそこで行われる行為そのものをデフォルメした具象的なイラストが主流です。文字情報や特定国家の歴史に依存しないユニバーサルデザインを志向してきた世界基準と、自国の行政・軍事管理から発展した日本の地図記号。この出発点の隔たりこそが、現在の大きな差異を生み出しています。