なぜ今、人食いバクテリアの脅威がこれほどクローズアップされているのでしょうか。厚生労働省の公式発表や国立感染症研究所の定点観測データによると、日本国内における劇症型溶連菌の報告数は過去数年で急激な右肩上がりを記録し、現在も高水準での推移が続いています。
感染症の専門家が指摘する急増の主な理由は以下の3点に集約されます。
第1に、病原性の高い変異株の台頭です。欧米で感染拡大を主導した「M1UK株」と呼ばれる系統が日本国内でも確認・定着しました。この株は従来株に比べて毒素の産生量が極めて多く、感染力と重症化リスクの両面で脅威となっています。
第2に、社会全体の免疫プロファイルの変化です。長期間の感染対策によって一般的な溶連菌の流行が一時的に抑制されていた結果、集団免疫が低下し、社会全体で菌に対する抵抗力が脆弱になった時期と重なりました。
第3に、高齢化社会の進展と基礎疾患です。劇症化しやすい高リスク層である高齢者や、糖尿病・肝疾患などの基礎疾患を持つ人の割合が増加していることも、重症例の絶対数を押し上げる要因になっています。