長く封印されていた譲位が再び現実のものとなった契機は、2016年(平成28年)8月8日でした。当時の天皇陛下(現上皇さま)がビデオメッセージを通じて公表された「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」です。
このメッセージで陛下は、生前退位の理由と真相として、高齢に伴う身体の衰えを率直に明かされました。全身全霊をもって象徴の務めを果たし続けることの難しさ、自身が病気や高齢で公務を行えなくなった場合に社会が停滞する懸念、そして皇室行事や葬儀が国民生活に与える過度な負担を憂慮されたのです。何よりも「国民統合の象徴」としての役割を形骸化させたくないという強い責任感がにじみ出ていました。
このお気持ちを受け、政府は憲法第4条が禁じる「天皇の政治的権能の行使」に抵触しないよう細心の注意を払いながら法整備を進めました。恒久的な法改正ではなく、一代限りの特例措置として2017年に皇室典範特例法(天皇の退位等に関する皇室典範特例法)を成立させました。
そして2019年(平成31年)4月30日、皇居・宮殿「松の間の儀」において、憲政史上初となる退位礼正殿の儀が厳粛に執り行われました。翌5月1日には徳仁親王殿下が即位され、平成から令和への改元が実現。お祝いムードの中で皇位が受け継がれるという、近代以降では前例のない平穏な代替わりが完遂されました。