長年親しまれてきた「フロントガラス中央上部」という貼り付け位置から、なぜ「運転席側上端」へとルール変更が断行されたのか。その最大の理由は、深刻化していた「車検切れ運行(うっかり失効)」の防止にあります。国土交通省が公表した統計データによると、車検有効期間を把握していなかったドライバーによる無車検運行は年間数千件規模で摘発されており、無保険運行(自賠責保険切れ)とセットで重大な社会問題を引き起こしていました。
旧来の中央位置では、運転席からルームミラーの死角になりやすく、ドライバー自身が車検満了日を日常的に意識しにくいという構造的欠陥が指摘されていました。そこで、乗車するたびに自然と視界に入る「運転席側の上部で前方かつ外側から見えやすい位置」へ車検シールの位置変更を行うことで、ドライバーの自覚を促すナッジ効果(行動変容の喚起)を狙ったのです。右ハンドル車であれば「運転席から見てフロントガラスの右上端」、左ハンドル車であれば「左上端」が新たな検査標章の貼り付け位置の基準です。
車検シール位置変更の理由について、指定整備工場(民間車検場)のフロント責任者は現場のリアルを次のように明かします。
「法改正の周知初期には『運転中に視界に入って鬱陶しい』という不満も多く寄せられましたが、実際に満了月を毎日意識するようになったオーナーが増え、期日ぎりぎりでの駆け込み入庫や車検切れトラブルは体感で大幅に減少しています」