圧巻の4回転ジャンプを武器にフィギュアスケート界を席巻したネイサン・チェン。そして、粘り強いスケーティングと圧倒的な表現力で世界のトップに立ち続けた宇野昌磨。彼らは羽生結弦にとって、常に背中を追い、あるいは追われる最高峰の好敵手だった。
試合前の緊張感が漂うウォームアップエリア。ライバルたちの視線が交差する瞬間、そこには独特の空気感が漂っていた。ネイサン・チェンが完璧な4回転を跳べば、羽生もまた自らの限界を超える構成で挑み返す。その高次元の戦いについて、宇野昌磨は後に「羽生さんという絶対的な存在がいたからこそ、自分の限界を引き上げることができた」と振り返っている。互いを恐れるのではなく、互いの存在を成長の糧とする。そこには、極限状態を共有する者同士にしか分からない密かな連帯感が存在していた。