SNSやまとめサイト等で頻繁に目にする「お賽銭に10円玉や500円玉を入れてはいけない」という言説。神職関係者や民俗学の有識者への取材によると、これらは教理に基づいた禁忌ではなく、民間信仰の中で生まれた言葉遊び(語呂合わせ)が独り歩きしたものです。
ネット上で流布しているお賽銭で10円がダメな理由は、数字の10を「遠(とお)」と読ませることで「遠縁(縁が遠のく)」を連想させる点にあります。また、10円硬貨の主原料が銅であることから「これ以上悪くならない(銅=同)」といったネガティブな解釈が後付けされたケースも見受けられます。
一方、お賽銭500円玉NGの真相として語られるのは、「500円が現在発行されている硬貨の中で最高額であるため、これ以上の効果(硬貨)がない」「頭打ちになる」という理屈です。高額を納めているにもかかわらず、洒落が転じて不吉とされる倒錯が生じています。
ほかにも、65円(ろくなご縁がない)、75円(なんのご縁もない)、85円(やっぱりご縁がない)など、避けるべき不吉な硬貨の理由として取り沙汰される組み合わせは枚挙にいとまがありません。しかし、全国の神社を統括する神社本庁の公式指針や寺院の教学において、硬貨の種類や特定の語呂合わせを理由に祈願を拒む規定は一切存在しません。不吉とされる説の多くは、昭和から平成のオカルト・スピリチュアルブーム期に広まった俗説であり、参拝時に過剰な恐怖や不安を抱く必要はありません。